今回は北海道美唄市で心療内科を専門に提供する「心療内科あおぞらクリニック」の院長・石本隆広(いしもとたかひろ)先生に、医師を志したきっかけから開業の経緯、患者さんと接するうえで大切にされていることなどを伺いました。
病院に不安がある、診てもらうか迷っている方はぜひ参考にしてください。
「人の心の仕組み」に関心を抱いたことが精神科医を志すきっかけに
ーーー石本院長が心療内科・精神科医になられたきっかけを教えてください。
石本院長:私が心療内科・精神科医を志したのは高校生の頃です。もともと医学部に進んだら「精神科を選びたい」と考えていました。特に強いきっかけがあったわけではありませんが、高校時代に犯罪心理学へ触れ「人の心の仕組み」に関心を持ったことが大きな影響だったと思います。
「安心して相談できる場を作りたい」大学病院での勤務を経て開業を決意
ーーー医師としてご勤務を始められてから、どのような経緯で開業に至ったのでしょうか?
石本院長:初期研修を終えた後、大学病院で勤務しました。精神科では外来だけでなく入院治療も経験でき、幅広い症例を学べたと思います。患者さんと長期的に関わる中で「より生活に寄り添った診療をしたい」という思いが強くなりました。
大学病院では急性期や入院への対応が中心です。しかし、退院後の生活や再発予防に関わる部分に自分の力を活かしたいと考えるようになりました。そこで、地域で通いやすく安心して相談できる場を作ろうと開業を決意しました。
開業医としてはまだまだ挑戦の連続ですが「身近に相談できる精神科医」であることを大切に、日々診療にあたっています。
「自分ではどうしたらいいか分からない」強い不安感に悩み来院される方が多いと語る石本院長
ーーー実際に来院される患者さんはどんな年齢層の方が多いですか?
石本院長:当院にいらっしゃる患者さんの年齢層は本当に幅広いです。中高生くらいの若い世代の方から、ご高齢の方まで来院されています。特に多いのは20代〜40代くらいの働き盛りの世代でしょうか。仕事や人間関係、ライフイベントに伴うストレスで受診される方が多い印象です。
最近では、中高生の相談も増えてきています。学校生活や友人関係の悩み、受験のプレッシャーなどが背景にあることが多いですね。
ご高齢の方では、不眠や気分の落ち込みなどをきっかけに来られるケースも少なくありません。「特定の年代に限られる」というよりは、ライフステージごとに抱える悩みに応じて、幅広い層の方が相談に来られている印象です。
ーーー初診の際、患者さんはどのようなお悩みを抱えている方が多いですか?
石本院長:初診でご相談に来られる患者さんのお悩みで多いのは、不安や気分の落ち込み、不眠といった症状です。具体的には
- 夜眠れない
- 気持ちが沈んで仕事や勉強に集中できない
- 急に不安感に襲われる
などのご相談がよくあります。
パニック発作のように急に動悸や息苦しさが出てしまい、「心臓の病気ではないか」と心配されて受診される方も多いですね。身体症状が強く出るため内科を受診し、異常がなく当院に紹介されるというケースも少なくありません。
「自分ではどうしたらいいか分からない」という不安を抱えて受診される方が多いため、初診時にはまずしっかりとお話を伺い、安心していただけるよう努めています。
「一番の悩みに寄り添う」安心して話せる場の提供を大切に
ーーー不安症の患者さんと接するうえで、特に意識されていることはありますか?
石本院長:不安症の方は、症状そのもの以上に
「このまま治らなかったらどうしよう」
「周りに迷惑をかけてしまうのではないか」
といった、先の不安を強く感じておられることが多いです。そのため、診察の際にはまず「大丈夫ですよ」「一緒にやっていきましょう」という安心感を持っていただくことを意識しています。
症状の感じ方や困りごとは、人それぞれ違います。同じ「不安症」でもある方は外出がつらかったり、ある方は夜になると不安が強くなったりします。画一的な対応ではなく、その方にとって一番困っていることに寄り添い、実際の生活の中でどう工夫できるかを一緒に考えるようにしています。
薬の処方だけで終わるのではなく、安心して話せる場を提供することが、不安症の方にとってはとても大切だと感じています。
ーーー不安障害の治療はどのように進めていくのでしょうか?
石本院長:初診では、症状の強さや生活への影響度を丁寧に伺い、必要に応じてお薬を使いながら症状を落ち着かせていきます。特に不眠やパニック発作など、日常生活に支障が大きい場合には、薬でサポートすることが有効です。
同時に、患者さんご自身が「どのような場面で不安が強くなるのか」「そのときにどう対処できるか」を一緒に整理していきます。認知行動療法などを取り入れながら、不安に振り回されにくくなる工夫を重ねていくのです。
治療は短期間で完結するものではなく、焦らず段階を踏んで進めていくことが大切です。お薬を徐々に減らしたり、生活リズムを整える習慣をつくったりと、一人ひとりに合ったペースで伴走していくことを心がけています。
ーーー患者さんのなかには「なるべく薬は使いたくない」という方もいるかと思いますが、そのようなご相談にはどのように対応されていますか?
石本院長:もちろん「薬はできるだけ使いたくない」というお気持ちは尊重しています。まずは患者さんの症状の程度や生活への影響を詳しくお伺いしたうえで、薬に頼らない選択肢も含めた治療方針を一緒に考えます。
具体的には、心理カウンセリングや呼吸法・リラクゼーション法などの心理療法を優先します。ただし、症状が強く生活に支障が出ている場合は、短い期間薬を使うことで不安が和らぎ、その後の心理療法がスムーズに進むこともあります。その際も、患者さんの希望や不安に合わせて最小限の薬量・期間で対応するよう心がけています。
「薬を使うかどうか」ではなく「患者さんにとって無理のない、安全で効果的な治療の組み合わせ」を一緒に検討する姿勢を大切にしています。
不安症状への対処は「日頃から習慣として取り入れておく」のが重要
ーーー自宅で不安症の症状が出た際、取り組みやすい対処法があれば教えてください。
石本院長:自宅で手軽にできる方法として、まずはリラックスできる行動を試してみることをおすすめしています。
具体的には腹式呼吸や軽いストレッチ・温かい飲み物を飲むこと・音楽を聴くことなどが挙げられます。こうした方法は、心と身体の緊張を和らげ、不安の波を少し落ち着ける効果があります。
大切なのは、症状が出てから慌てて対処するのではなく、日頃から習慣として取り入れておくことです。例えば寝る前に深呼吸をする・朝の散歩を取り入れるなど、自分に合ったリラックス方法を日常に組み込むと、症状の予防にもつながります。
初診の目安は30~40分。患者さんに応じて診療時間は変わります
ーーー初診ではどのような流れで診察を進めるのでしょうか?(診療時間・問診内容など)
石本院長:初診では、まず予約時間にご来院いただき、診察室での問診から始めます。問診では現在の症状や日常生活における困りごとなど、適切な治療方針を立てるための情報を集めます。
初診の場合、診療時間は30~40分程度を見ていただくことが多いです。お話をしっかり聞いた上で、症状や患者さんの希望に応じて薬物療法や心理療法など、今後の治療方針についてご説明します。
「身近に相談できる精神科」他にはないあおぞらクリニックの強みとは
ーーー病院の雰囲気やスタッフの対応で大切にしていることは何ですか?
石本院長:当院では「安心して相談できる場の提供」を何より大切にしています。
病院の雰囲気は、堅苦しさや緊張感を感じさせないよう、温かみのある内装や落ち着いた空間づくりを意識しています。待合室も、なるべくリラックスできるように、明るさや椅子の配置、雑誌や音楽の選び方など細かい点にも配慮しています。
スタッフの対応については、患者さんの話に耳を傾ける姿勢と、丁寧で思いやりのある接し方を重視しています。受付や看護師も含め、当院全員が「患者さんの不安や緊張を和らげる存在」であることを心がけています。
特に心療内科や精神科では、症状を話すこと自体が大きなハードルになることがあります。そのため、「ここでは否定されない」「安心して話せる」という感覚を持っていただけることが、治療の第一歩になると考えています。
ーーー他の病院にはない、貴院ならではの特徴や特色があれば教えてください。
石本院長:当院の特徴としてまず挙げられるのは、地域に根ざした「身近に相談できる精神科」であることです。大学病院や大規模病院では急性期の治療や入院中心の対応が中心になりますが、当院では外来を中心に生活の中で抱える不安やストレスに寄り添った診療を行っています。
薬だけに頼らない治療方針も、特色のひとつです。症状の強さに応じて薬を用いることはありますが、患者さんの希望や生活に合わせてカウンセリング、漢方薬の処方なども組み合わせ、個々に最適と思われる治療プランを提供しています。
院内の雰囲気やスタッフの対応も特徴です。「安心して話せる空間づくり」に力を入れ、医師だけでなく看護師や受付スタッフも含めて、患者さんが落ち着いて過ごせるよう配慮しています。「来院しやすく、話しやすい精神科」として、地域の方々に選んでいただいていると感じています。
ーーー最後に、心療内科や精神科で診てもらいたい気持ちはあるものの、病院へ行くのに不安を感じている方、「こんなことで相談してもいいのかな…」と迷っている方へメッセージをお願いします。
石本院長:まず、病院に来るかどうか迷っている方へお伝えしたいのは「どんな小さな悩みでも、相談して大丈夫」ということです。心療内科や精神科に来る方の多くは、最初は不安や緊張を抱えていらっしゃいます。「こんなことで相談してもいいのかな…」と思うことも当然ですし、その気持ち自体が一つの症状であることもあります。
無理に元気になろうとする必要はありません。まずは、安心して自分の思いを話せる場に身を置くことが大切です。私たちは患者さんの話を丁寧に聞き、生活に寄り添いながら一緒に解決策を考えていきます。
「少しでも気になることがある」「生活に支障が出ている」と感じたら、遠慮せずに相談してください。その一歩が、症状の改善や安心した生活への第一歩になります。患者さんお一人お一人のペースを尊重し、焦らず伴走していくことを心がけています。






